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2021.10.10
     青いフェルトのピアノ      



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目まぐるしいのか、止まっているのか、つかみどころのない時間が長くなりました。

カレンダーは一日一日と進んでいくけれど、予定を書いては消し、霧の中を歩いている感じです。 ニューオリンズのミュージシャンが「2週間先のことなんてわかんないよお」って笑ってた気持ちがちょっとわかるような。

不安と言えば不安だけど、自由と言えば自由。なっちゃったことは仕方ないから、自由を謳歌する、ってことにしてます。

それでも、友人を失い、気分がドドっと重〜〜いほうに傾いていた9月。 中学の同級生が彼女の母の遺品であるピアノをレストアすることになりました。

私とほぼ同じ年月を生き、ある時から演奏されることなくひっそりと家の隅で時を過ごしてきたピアノの、蓋と鍵盤を外された奥にあった、鮮やかな青いフェルト。 「いつか、みんなに会える日が来ると思ってた」

どれだけ時間が止まっていても、窓が開いたらまた針は動き始める。 川の水面のような青いフェルトが、心に風と清水を流してくれました。 季節はちゃんと進み、金木犀が甘やかに香ってきます。

今月も一歩ずつ。

少し心の重いお話ですみません。

ピアニスト、板谷大さんが、先月亡くなりました。
オールドジャズを温かく、弾けるように弾きこなす素晴らしい才能でした。
ピアニスト同士って、一緒に演奏する機会はそんなにないのだけれど、同じ楽器から紡ぎだされる音の中に、すごくたくさんのことを感じます。
あ、あれを聞いていたんだ、あれが好きなんだ、こんなこと感じてるんだ...って。
3月に1曲連弾する機会があって、本当に楽しかったなあ。

並行して流れる川みたいに、近づいたり、離れたりしながら、ふとした機会に演奏を聴いて、新しい景色を見せてもらう、鏡のような、分身のような存在。
その機会がもうやってこない。
喪失感に呆然と立ち尽くしています。

同じころに発表された緊急事態宣言解除が、はるか遠い世界のことのように感じました。

いつも思い出す、事故で同僚をなくしたアメリカの野球選手の言葉

「僕たちは必ずまたこうやって笑顔で会えるかどうかわからない。だから家を出るとき、家族を抱きしめ、キスをして出かけていくんだ」

今、心はとても重いです。仲間たちは、みんな。
その心をどうほどいていったらいいのか、探す毎日です。

板谷さん、どうぞ天国で、サッチモと楽しく演ってくださいね。